スウェーデンのAFRYテストセンターは、スウェーデンの鉄道輸送クライアントの依頼を受けて、スウェーデン北部で列⾞のブレーキ性能テストを実施しました。
2020年初頭、貨⾞を含む編成列⾞に様々なタイプのブレーキブロック(ブレーキ部品)を装備し、冬季におけるブレーキ性能を⽐較しました。また、貨⾞にディスクブレーキを装着した参考試験も実施されました。
ひずみと温度の計測には、堅牢な分散型 データロガーKRYPTONユニットを使⽤し、収録&解析ソフトウェアDewesoftXにより必要な結果が得られました。
課題
2019年AFRYテストセンター は、スウェーデンの鉄道輸送クライアントから、さまざまな冬季条件下での貨物列⾞のブレーキ効果をマッピングすることを目的として、計測技術の専門知識の⽀援を依頼されました。
AFRYテストセンターは30年以上の歴史を持ち、 スウェーデン最⼤規模の独⽴系試験機関の⼀つです。スウェーデンのボルレンゲにある設備の整った⾃社試験ラボで試験業務を⾏っています。計測業務は、スウェーデン国内外の様々な場所でフィールド試験として、また様々な試験と連携したラボ環境において実施されます。
このテストセンターは、世界40カ国以上で17,000人の専門家を擁する国際的なエンジニアリング,設計,アドバイザリー企業であるAFRYの⼀部門です。AFRYは、インフラ,インダストリアル&デジタルソリューション,プロセス産業,エネルギー,経営コンサルティングの5つの部門に分かれており、インフラ,インダストリー,エネルギーの3つの主要セクターにわたってサービスを提供しています。
テストセンターは、インダストリアル&デジタルソリューションズ部門に属する事業ユニットで、試験と検証に重点を置いて業務を⾏っています。事業は主に、計測,試験・解析,シミュレーションの3つの分野で構成されています。
当社の顧客はあらゆる業界に広がっており、その業務は、例えばインプラントの検証から船舶,プロセスプラント、あらゆる種類の⾞両まで業務内容は多岐にわたるため、AFRYテストセンターの機器は使いやすく、柔軟性と耐久性に優れていることが重要です。そのため同センターでは⻑年にわたりDEWESoft社のハードウェアとソフトウェアを使⽤しています。
テスト中の貨物列⾞
鉄道騒音に関するEU規制
このブレーキ試験課題の背景にあるのは騒音が重要な公衆衛生問題であり、人々の健康と福祉に悪影響を及ぼす可能性があるということです。貨⾞、特に鋳鉄製のブレーキブロックを備えた貨⾞からの騒音は、鉄道騒音の大きな要因となっています。
欧州連合(EU)は、欧州における鉄道騒音レベルに対処するため、 欧州委員会規則(EU)第1304/20142号(TSI騒音)の改正を勧告しました 。この改正により、新型貨⾞に適⽤される現⾏の最⼤騒音レベルが、既存の貨⾞にも適⽤されます。この改正案は、鋳鉄製ブレーキブロックを「サイレントブレーキ」(複合ブレーキブロックまたはディスクブレーキ)に後付けすることを意味します。複合ブレーキブロックはより安価な代替手段です。
お客様は、スウェーデン鉄道網への変更案の影響を検討しました。この変更は騒音低減に効果がある⼀⽅で、貨⾞管理業者と貨⾞を運⾏する鉄道会社にとって経済的負担となることが予想されます。
試験により、複合ブレーキブロックは厳しい冬季条件下ではブレーキ性能が低下することが示されています 。運⽤上の対策により、この性能低下を部分的に軽減することが可能です。
欧州からスウェーデンに列⾞が到着する際、鉄道会社は許容可能なブレーキ性能を確保するために、複合材製ブレーキブロックを備えた⾞両を連結した列⾞に対し、鋳鉄製ブレーキブロックを搭載した⾞両を連結する必要があります。
これらの対策にもかかわらず、最⾼速度は時速80kmに制限され、既に飽和状態にある鉄道網の輸送⼒低下につながります。
この任務はAFRYテストセンターにいくつかの課題をもたらしました。最も重要な課題は、氷や雪による厳しい寒さに加え零度の天候における湿気といった環境条件です。さらに、列⾞構成が⻑⼤であるため、⽐較的⻑距離にわたる信号伝送と、計測システムの異なるユニットを複数の⾞両に分散させる可能性が必要でした。また、各テストケースにおいて、列⾞の位置,速度、そして現在の気象条件を記録することも求められました。
必要なテストと計測を実⾏するには、次の機能を備えた計測システムが必要でした。
- 非常に優れた耐環境性
- 列⾞セット内の異なる場所に データロガーを分散設置する
過酷な屋外環境もテストスタッフにとって課題となり、このような状況でもシステムが使いやすく、設置しやすいことが重要でした。
テスト中のKRYPTON
計測セットアップ
我々は柔軟性があり、低温, 雪,氷,振動などを伴うスカンジナビアの冬の気候の厳しい環境に耐えられる計計測ソリューションを提供する必要がありました。
この計測セットアップのもう⼀つの課題は、列⾞が北から南へ、そしてその逆の双⽅向に⾛⾏することでした。テストエンジニアの作業は最⼩限に抑えられ、計測⽤ラップトップをもう⼀⽅の機関⾞まで運ぶだけで済むようにする必要がありました。つまり、セットアップに⼀切の調整を加えることなく、計測チェーンを双⽅向に機能させる必要がありました。
最終的なソリューションは、複数のKRYPTONユニットをデイジーチェン接続してひずみと温度を計測するというものでした。パワーインジェクタとパワージャンクションを備えたKRYPTONi-8xTHデータ2台、KRYPTON-6xSTGデータを12台使⽤しました。また、列⾞の位置を取得するために、DEWESoftのGPS受信機も使⽤しました。
図3.列⾞セットの試験レイアウト - 両端に機関⾞を配置した5両編成。KRYPTONは3〜5両目に配置。電⼒接続部とパワーインジェクタを使⽤することで、セットアップ全体への電⼒供給と計測を双⽅向から確実に⾏えるようにした。
完全なセットアップはAFRY の要件どおりに動作することを確認するために、スロベニアのDewesoft R&D部門によってテストおよびシミュレーションされました。
KRYPTONは 、過酷な環境下でのフィールド計測に適した、堅牢な分散型EtherCATデータ収録システムです。KRYPTONシステムは IP67の保護等級を備え、 -40〜85℃の 極端な温度範囲で動作し、⾼い耐衝撃性を備えています。
KRYPTON概要
- 使⽤温度範囲 -40〜85℃
- 耐防塵,防滴 IP67, 65対応
- 耐振動,耐衝撃 980m/s2以下
- ⼊⼒ 温度(熱電対/測温抵抗体),電圧,ひずみ,振動,電流,カウンタ,デジタル⼊出⼒ (DIO), CAN
- 最⼤サンプリング速度:20kHz/40kHz 熱電対および測温抵抗︓100Hz
- ⾼精度A/D 24ビット デルタシグマ⽅式/逐次⽐較⽅式
- EtherCAT®テクノロジ対応
ケーブル1本でデータ転送,電源,同期信号を供給ユニット間を最⼤50mの⻑さで接続可能
ディジーチェン接続によるユニット増設 - 耐環境型CPUユニット(KRYPTON CPU)をラインアップ
- 多チャネル対応マルチタイプとシングルタイプを混在可能
- ⾼速データロガーSIRIUSと同時計測
関連ページ
【動画】耐環境分散型データ収録システム KRYPTON
【動画】堅牢なデータ収録システム KRYPTON
図4.全編成の列⾞がブレーキを作動させた時点の計測結果のスクリーンショット。
下のウィンドウにはひずみゲージセンサからの生データが表示され、上のウィンドウには
ブレーキに加わった圧⼒と列⾞の速度が表示されます。
【動画】DewesoftX計測データファイルをビデオとしてエクスポート
結果
DEWESoft社 は、 次のような機能を備えた堅牢な システムソリューションを提供しました。
- 厳しい気候に耐え、
- KRYPTONシリーズに使⽤されているDewesoft EtherCATテクノロジーにより、セットアップを再構成することなく、列⾞の両端からセットアップを同様に動作させる。
この機能により、列⾞の⽅向転換や機関⾞の切り替えのたびに技術的な問題や設定調整による列⾞の出発遅延がなくなり、テストエンジニアのストレスも⼤幅に軽減されました。
ソフトウェアのユーザインターフェスは使いやすく、非常に簡単に使⽤できます。KRYPTONシステムは設置が簡単で迅速であり、スウェーデンの過酷な環境にも耐えることができました。KRYPTONモジュールはこの特定のテストのために購⼊しましたが、他のDewesoftデータロガーと互換性があるため、他のプロジェクトにも使⽤される予定です。
これは⽇常的に⾏われる計測ではないため、お客様が直⾯しているセットアップと課題を理解することが不可⽋です。最終的にシステムの安定性、テストエンジニアへのサポートには非常に満足しています。AFRYは今後さらに計測を⾏い、セットアップの拡張が必要になるかもしれません。
