DualCoreADC®テクノロジ

長年担当者を悩ませてきた大きな課題は、特定のチャネルに最適なゲインを設定することです。たとえば通常は5V未満の信号が、場合によっては100Vまで急上昇する可能性がある場合はどうでしょうか?
0~5Vのデータに対応するようにADC(アナログ-デジタルコンバータ)の分解能を設定した場合、信号がそれを超えて上昇するとシステムは完全に過負荷になります。しかしゲインを100Vに設定すると信号が5V以内の場合、振幅軸の分解能が低下します。

解決策の1つは異なるゲインに設定した2つのチャネルを使用し、一方で0~5Vデータを参照しもう一方でより高い振幅データを参照することです。しかしこれは極めて非効率です。入力信号ごとに2つのチャネルを使用することはできません。同じ作業を行うには2台のDAQシステムが必要になります。
さらに各テスト後のデータ解析が、いっそう複雑で時間がかかるようになります。

このゲインの問題に対する良い解決策はありませんでした。いままでは・・・

DEWESoftのDualCoreADCテクノロジは、各チャネルに2つの24ビットADCを配置して、
驚異的な160dBのダイナミックレンジを実現します。

DEWESoftのDualCoreADC®テクノロジは、チャネルごとに2つの独立した24ビットADCを使用し、リアルタイムで自動的に切り替えて、1つのシームレスなチャネルを作ることでこの問題を解決しました。この2つのADCは、常に入力信号の高ゲインと低ゲインを計測しています。これによりセンサの計測可能範囲が広がり、信号がクリップされるのを防ぎます。

【動画】DualCoreADCテクノロジ

またそれは動的信号だけではありません。熱電対のような非常に遅い信号でも、可能な限り最大の振幅軸分解能を持つことが重要です。

1500°のスパンで計測できる熱電対を想像してみてください。ADCでの振幅軸が多いほど、温度信号の分解能は高くなります。各ビットが垂直軸の分解能を実質的に2倍にすることに注意してください。DEWESoftのDualCoreADCテクノロジは、ある時点の信号の大小にかかわらず、可能な限り高いダイナミックレンジで計測を行います。

このテクノロジによりSIRIUSのデータ収録システムは、130dB以上のS/N比と160dB以上のダイナミックレンジを実現しています。これはノイズが20分の1の一般的な24ビットシステムよりも20倍優れています。DualCoreADCをベースにしたSIRIUS DAQシステムは、チャネルあたり最大200kS/sのサンプルレートを提供し、独自の方法でアナログ波形をデジタルに変換します。

しかし高ダイナミックレンジとアンチエイリアス機能を持つチャネルがある一方で、他のチャネルでは、はるかに高いサンプルレートを必要とする場合はどうでしょうか?
この件については、次項のハイブリッドADCテクノロジを参照してください。

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ハイブリッドADCテクノロジ

長年担当者は、デルタシグマADC(アナログからデジタルへの変換)とSAR ADC(逐次比較)の間で難しい選択に直面してきました。

デルタシグマADCは、高ダイナミックレンジ,24ビット分解能,および組み込みのアンチエイリアシング機能を提供しますが、SAR ADCは、より広帯域で矩形波などのインパルス信号も正確に再現することができます。

SAR ADC デルタシグマADC
高サンプルレート SARほど高速ではない
通常16ビット分解能に制限 24ビット分解能
リンギング/オーバーシュートなしで矩形波を処理 正弦波/自然波形に最適
組み込みのAAFなし 矩形波はリンギングを引き起こす
  組込みAAF

高速サンプリングとアンチエイリアスフィルタによる高解像度の両立が必要なアプリケーションでは、どちらかを犠牲にするしかありませんでした。あるいは、これらの異なる要求に対応するため、DAQシステムを2つ購入するかです。

DEWESoftはSIRIUS-XHSシリーズ用に開発されたハイブリッドADCテクノロジを使用して、この問題を解決しました。この技術により、以下のの3つの動作モードを選択できます。

1.高帯域幅モード(フィルタオフ)
5MHzの帯域幅15Ms/ sのサンプリングレートを備えたSIRIUS-XHSは、リンギングやオーバーシュートなしでインパルス,ステップ,およびスクエア信号を収録できます。 このモードは、トランジェントレコーディングとパワー解析に最適です。この動作はサンプルレートと帯域幅が高いことを除けば、一般的なSAR ADCと似ています。

2.高ダイナミック,エイリアスフリーモード
最大1.875 MHzのサンプリングと最大1 Ms / sの帯域幅、および150dBのダイナミックレンジ。 データは完全にエイリアスフリーなので、すべての高周波数は完全に拒否されます。 ナイキスト基準に近い帯域幅を持つこのエイリアスフリーフィルタは、音や振動などの周波数解析に使用されます。矩形波やその他のインパルス信号には、リンギング/オーバーシュートがあります。この動作は、サンプルレートと帯域幅がはるかに高いことを除けば、従来のシグマデルタADCと似ています。

3.リンギングフィルタモード
エイリアスフリー収録を維持しながら、インパルス信号のオーバーシュートのないリングフリーフィルタを提供します。カットオフ周波数は自動的にサンプリング周波数の20%に設定されるため、計測はエイリアスフリーのままです。

【動画】ハイブリッドADC

もう一つ覚えておくべき重要なことは、各チャネルは個別にこれらのモードのいずれかに設定でき、異なるサンプルレートに設定することができることです。したがって担当者は1つの機器を選ぶ必要はなく、重要なアプリケーションはすべて1台のDEWESoft機器で行うことができます。

担当者が高帯域幅とエイリアスフリーのチャネルを選択したり、異なるサンプルレートを選択したりしても、フィルタリングはすべての信号がゼロ位相シフトで完全に時間調整されるように設計されています。

DEWESoftハイブリッドADCは、リングフリーの高速サンプリングと高ダイナミックレンジ,アンチエイリアスを組み合わせ、1台ですべての主要なアプリケーションをカバーします。

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高速データ収録システム SIRIUS-XHS

高速データ収録システムSIRIUS-XHSには、DEWESoftのハイブリッドADCテクノロジ(上記)に加え、高度な機能が組み込まれています。 外見はSIRIUSシリーズと同じように見えますが、システムは新しく再設計された心臓と頭脳で構成されています。

SIRIUS-XHS 8チャネル

SIRIUS-XHSは、以下のパフォーマンスと汎用性を提供しています。

  • ハイブリッドADCは、5MHzの帯域幅でチャネルあたり15MS/sでデジタルに変換されたアナログ信号を提供します。また、チャネルあたり最大1MHzの帯域幅で、リングフリーの高帯域幅,16ビットサンプリング,および24ビットのエイリアスフリーのデルタシグマタイプのサンプリング両方を実行する機能もあります。
  • ハイブリッドADCのより高い帯域幅をサポートするように再設計されたアンプ
  • Linuxオペレーティングシステムで実行されているARMプロセッサを搭載した強力なFPGA
  • チャネル間およびチャネルからグラウンドを絶縁するガルバニック絶縁技術をさらに向上させた新しいメインボード
  • データ転送インタフェース(USB3.0、GLAN)をアップグレードし、ディスクへの高速データストリーミングに対応。8つのチャネルすべてを1チャネルあたり15MS/sに設定し、USB3.0を介してディスクに連続的にストリーミングできます。
  • USB 3.0,GLAN,XCP,CAN,OPC UAなど最新のデータインタフェースは、PTPv2同期を備えており、オープンで柔軟な接続を可能にします。

SIRIUS-XHSは下位互換もあり、SIRIUS,KRYPTON,IOLITE,DEWE-43など他のDEWESoft製品と同期できます。

PTP時刻同期

SIRIUS-XHSシステム専用のPTPv2は、PTP(Precision Time Protocol)の最新バージョンであり、クロックマスタを使用してコンピュータネットワーク上のすべてのクロックを同期します。

PTPv2は、LAN全体で最大1 µsのクロック精度を提供します。PTPv2は、2002年にリリースされたオリジナルのPTPv1からの大きく前進しました。PTPv2はデータ収録アプリケーションが必要とする種類の時間精度と安定性を備えています。

複数のSIRIUS-XHSは、PTPv2,IRIG,またはPPS信号を使用して相互に同期できます。各デバイスはクロックマスタまたはスレーブとして機能し、スタンドアロン操作を可能にします。

SIRIUS-XHSシステムはPTP v2経由で同期可能

PTPv2ネットワーク全体は、任意の外部時間ソース(IRIG,GPS PPS,NTPなど)を参照することができ、ネットワーク上のすべてのデバイスがそのクロックを参照することができます。PTPv2は、金融取引サービスプロバイダ,携帯電話タワー事業者,配電システムなどNTPよりも優れた時間精度を必要としながらも、GPS PPSに簡単にアクセスできないそのネットワークで積極的に採用されています。

複数のSIRIUS-XHSデバイスがある場合は、外部クロックプロバイダをPTPとして使用するか、DEWESoft DAQデバイス(クロックスレーブ)をPTPクロックソースとして使用できます。

SuperCounter®テクノロジ

現在市場に出回っているほぼすべてのDAQシステムは、アナログ入力に加えて1つ以上のデジタル入力を提供しています。タコメータや近接センサなどパルス出力信号ソースの出力を記録するために、入力パルスをカウントできるデジタル入力が必要になることがよくあります。

DEWESoft SuperCounter®入力は、幅広いエンコーダ,ギア歯センサ,近接センサなどと互換性があり、すべてのDEWESoft DAQシステムで使用できます。

システムは1つ以上のSuperCounter®入力で構成できます。これらは通常、頑丈でロック式のLEMOコネクタで提供されますが、一部のモデルでは他のコネクタの可能性もあります。

DEWESoft SuperCounter®の代表的なピン配列構成のコネクタ

インクリメンタルエンコーダのA,B,Z出力をサポートするために3つの入力が用意されています。
ディスクリート入力(TTL ON / OFF信号)を計測する場合は、これら3つの入力をカウンタではなく独立したディスクリート入力として使用できます。12Vおよび5Vのセンサ供給電圧,デジタル出力,およびアース接続が利用可能です。

しかしSuperCounter®を本当に特別なものにしているのは、カウンタデータとアナログデータやその他のデータを正確に整合させることです。

ほとんどのDAQシステムで使用可能な標準カウンタは、整数の解像度の出力(1、1、2、2など)のみを提供します。その結果それらの出力は常にアナログセンサデータの1サンプル後ろになります。これは1サンプルでも位相がずれると計測結果が変わる可能性がある場合、回転振動やねじり振動などのアプリケーションで現実的な問題になる可能性があります。

SuperCounter®は1.37,1.87,2.37などの浮動小数点値を抽出し、それらを残りのデータと一致させることでこの問題を解決します。実は、SuperCounter®には1つに2つのカウンタがあります。入力は両方のカウンタに並列に供給され、サブカウンタは信号の立ち上がりエッジの正確な時間を計測します。その結果アナログ値に対するカウンタの実測値を算出し、完全に一致させることができます。

以下のビデオでは、SuperCounter®の計測値がアナログチャネルと完全に同期している様子を紹介しています。通常のカウントモードとSuperCountingモードの実際の比較も収録しています。

【動画】DEWESoft SuperCounter®テクノロジ

CANバスやビデオデータなどの他のデータソースも、すべてのDEWESoftシステムのアナログデータと同期されます。

この技術のもう一つの「秘密」は、DEWESoftのSuperCounter®入力が、アナログのサンプリングレートとは独立した、より高い102.4MHzのタイムベースで動作していることです。

DEWESoft SuperCounter®のアーキテクチャ

この技術の結果、アナログデータとカウンタ/デジタルデータは、大幅に異なるレートでサンプリングされていても、正確に同期されます。SuperCounter®のその他の重要な機能は次のとおりです。

  • ガルバニック絶縁:ノイズとクロストークがデータポイントとして誤ってカウントされるのを防ぎます。
  • ユーザが選択可能なフィルタリング:100ns~5usですべての計測の整合性を保護します。
  • 複数の動作モード:イベントカウント,センサモード,波形タイミングモードなど。
  • ディスクリート入力モード:各カウンタは、3つの独立した絶縁ディスクリートデジタル入力として使用することができます。
  • センサのサポート:インクリメンタルエンコーダ,ギア歯センサ,テープセンサ,RPMタコセンサ,CDMセンサなどを含む。

SuperCounter®のハードウェアは、収録&解析ソフトウェアDewesoftXで完全にサポートされており、すべてのパラメータを簡単に設定することができます。DewesoftXにはセンサ(エンコーダ,タコ,ギア歯センサなどを含む)を作成,編集,再利用できるセンサデータベースが含まれています。 これによりセットアップをすばやく簡単に行えます。担当者は数回クリックするだけでこのデータベースに任意のセンサを追加し、次の試験に使用するときに名前でセンサを選択できます。

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ガルバニック絶縁(電気的絶縁)

試験と計測の世界では正確な測定を行うために、グランドループとコモンモード電圧過負荷を回避または排除することが重要です。これらの問題の主な原因を見て、電気的絶縁を使用してそれらを回避または排除する方法を学びましょう。

アナログドメイン絶縁システム

コモンモード電圧は、通常センサを計測システムに接続するケーブルから計測チェーンに入る不要な信号です。「ノイズ」と呼ばれることもあるこれらの電圧は、計測しようとしている実際の信号を歪めます。それらは振幅に応じて、「小さな煩わしさ」から実際の信号を完全に覆い隠して計測を破壊するまでの範囲及ぶ可能性があります。

コモンモード信号を除去する最も基本的なアプローチは、差動アンプを使用することです。このアンプには、正と負の2つの入力があります。アンプは2つの入力間の差のみを計測します。センサケーブルに乗っている電気ノイズは、両方のライン(信号の正のラインと接地(または信号の負)のライン)に存在するはずです。

差動アンプは両方のラインに共通の信号を除去し信号成分のみが通過します。

これはある程度は問題なく機能しますが、アンプが除去できるコモンモード電圧(CMV)には限界があります。信号ライン上に存在するCMVが差動アンプの最大CMV入力範囲を超えると出力は「クリップ」します。その結果、歪んだ使用不可能な出力信号が発生します。

したがって最適な解説策である絶縁が必要です。絶縁型アンプには、コモンモード電圧より上に「フロート」する入力があります。それらは1000ボルト以上の絶縁破壊電圧を持つ絶縁バリアで設計されています。これにより、非常に高いCMVノイズを除去しグランドループを排除できます。

絶縁型アンプは小さなトランスを使用して入力を出力から絶縁(「フロート」)するか、小型のフォトカプラや容量性カップリングによって、この絶縁バリアを作成します。一般的には、最後の2つの方法が最も優れた帯域幅フォーマンスを提供します。

4つの高電圧および4つの低電圧絶縁モジュールを備えたSIRIUS-XHS

DEWESoftのSIRIUS DualCoreおよびHSシグナルコンディショナを見ると、それらの入力が1000Vの絶縁電圧を提供していることがわかります。

【動画】DEWESoftのガルバニック絶縁

データ収録の世界は多くの場合、信号入力だけではありません。シグナルコンディショナはセンサに電力を供給するために、励起電圧または電流を提供します。ひずみゲージ,RTD,LVD,およびIEPE加速度計はすべて電力を必要とするセンサです。

メーカは見落としがちですが、これらの励起線を絶縁することが重要です。そのためDEWESoftでは、直接地面への短絡機能を備えた絶縁入力や差動入力と過電圧保護機能を全製品に搭載しています。それは製品とオペレータをグランドループから保護する安全機能です。

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マルチドメイン同時計測

ほとんどのDAQシステムはひとつのドメインでのみ収録しますが、DEWESoftのデータ収録システムは時間ドメイン,角度ドメイン,周波数ドメインで同時に収録します。またドメイン間での同期を維持します。

DewesoftXソフトウェアは、サポートされているI/Oインタフェースの点でユニークです。 完全に同期して収録し、同じデータファイルに保存して視覚化することができるインタフェースの数に匹敵するものは他にありません。

サポートされているインタフェースは次のとおりです。

シグナルドメイン サポートされている入力とインタフェースの種類
アナログデータ 電圧,電流,IEPE,電荷,ひずみ,熱電対,RTD,ポテンショメータ,LVDT,抵抗など
デジタルデータ ディスクリート入力,カウンタ,エンコーダ,タコメータ,ギア歯センサ
ビデオ DirectX互換カメラ,超高速ビデオカメラ,熱IRイメージングカメラ,GoProカメラ
ナビゲーション GPS,慣性測定装置(IMU&INS),ジャイロスコープ
ビークルバス CAN,CAN FD,FlexRay,XCP / CCP,キスラーホイール,ADMA
航空宇宙インタフェース PCMテレメトリ,ARINC 429,MIL-STD-1553,IRIG,Chapter10
産業用バス OPC UA,イーサネット,Modbus,Siemens S7,シリアル

さまざまなタイプのデータはすべて、無数の組み合わせでDEWESoftデータ収録システムに入力できます。それらはすべて同時に別々のレートや時には違ったレートで入ってきているにもかかわらず、常に同期していいます。

【動画】DewesoftXのマルチドメイン計測

上の動画では、電気自動車の内部で収録していることがわかります。モータとマイクロフォンからの時間領域電圧を同時に計測し、位相とエネルギーの計算を数値とベクトルスコープで実行および表示しています。

また、ダッシュボードカメラからリアルタイムビデオを録画し、GPSの速度と位置のデータを収録して表示しています。通常これらを実行するには少なくとも3つの異なる機器が必要ですが、DEWESoftは1台製品でこれらを可能にしました。

収録&解析ソフトウェア DewesoftX

2000年、収録&解析ソフトDewesoftXが導入された当時、データ収録ためのソフトウェアは現在とは非常に異なっていました。担当者は、次の2種類のソフトウェアから選択するしかありませんでした。

  • メーカーのハードウェアを制御するだけの、変更不可能なソフトウェア
  • 特定のタスクを実行するために、オリジナルで作成された完全にカスタムのソフトウェア

1990年代のデータロガーとDAQシステムは汎用機器でした。それらはほんの数種類のアナログ入力とおそらくいくつかの個別のデジタル入力ラインを提供していました。ソフトウェアは、シグナルコンディショナ回路のセットアップ,アナログ波形のデジタルへの変換,データ収録を可能にする以外に多くのことを行う必要はありませんでした。もう1つの仕事は、データを内部記憶媒体(通常は回転するハードディスク)に記録し、ある種の画面にデータを表示することでした。

ソフトウェアは非常に基本的なもので、モーダル解析,音圧テスト,自動車のブレーキテスト,標準に準拠した出力テストなどの特殊な機能は実行できないことがよくありました。これらの独自のパッケージには、柔軟なレポート生成や収録後の解析機能もありませんでした。

これらの制限により、多くの担当者がNIのLabVIEW®のような開発プラットフォームに目を向けるようになりました。LabVIEW®は、データの収録と制御のためのプログラミング環境です。そして担当者は、オンラインとオフラインでさまざまなカスタム機能を実行するために、好きなものを作ることができるようになったのです。

欠点は、これらのカスタムシステムを自分でプログラムし(またはLabVIEW®プログラマを雇って)、厳密にテストする必要があることでした。それから終わりのないメンテナンスがありました。多くの担当者は、これらのカスタムソリューションを機能させるには、実際にはプログラマになる必要があることに気づきました。または1人以上のフルタイムのLabVIEW®エキスパートを雇ってシステムを作成し稼働させ続けます。

1990年代後半には、ターンキーソリューションの利点とカスタムソリューションの柔軟性,拡張性,および強力な機能を組み合わせたDAQソフトウェアプラットフォームが明らかに必要になりました。
ただし担当者に大きなプログラミングの負担をかけず、メンテナンスの費用もかからないような方法で。

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アナログ信号を超えたDAQシステムの拡張

電圧という物理現象を記録することが、ほとんどのDAQシステムの中心でした。しかし担当者の間では、それ以外のインタフェースの要望も増えていました。

たとえば自動車エンジニアは、CANバスからのデータを記録する必要がありました。航空宇宙や自動車のエンジニアは、GPS衛星から位置情報を取得し、時刻の同期にも利用する必要がありました。そしてビデオカメラを接続してテストの様子を撮影できることは、素晴らしいと思いませんか?

しかし、当時のDAQシステムにはそのような機能はありませんでした。唯一の方法は、独自にカスタムソリューションを作成することでした。これには数百時間または数千時間のプログラミングと、その後の永遠のメンテナンスが必要でした。

収録&解析ソフトDewesoftXの最初の商用リリースは、非常に限られたターンキーソフトウェアとLabVIEW®のようなオープンエンドの開発システムとのギャップを埋めることを目的としていました。これはLabVIEW®以来、DAQソフトウェアにおける最大のブレークスルーであり今も変わりません。

カスタマイズ可能な画面,同期されたビデオ,GPSを表示するDewesoftXの初期バージョン

Dewesoftはグラフィカルなウィジェットと画面を使用して、自由にディスプレイを構築できます。

Dewesoftの重要な技術革新の1つは、異なるソースから異なる速度で入ってくるすべてのデータを同期させることでした。

たとえば、CANバスメッセージは互いに非同期で入ってきます。ウェブカメラはハードクロックではなく、可能な場合フレームを出力します。また、DAQシステムの標準デジタル入力は、アナログサンプルレートよりもはるかに高くサンプリングする必要があります。しかし、他のメーカーはマスタークロックとしてアナログレートを使用していたため、デジタル値をその低いレートに強制的に適合させることで、貴重な時間軸の分解能を失っていました。

DEWESoftはデータの受信速度に関係なく、100 MHzを超える速度で動作するマスターハードウェアクロックに従ってすべてのデータにタイムスタンプを付ける方法を開発しました。これによりすべてのデータは互いに同期されるようになりました。ウェブカメラが一貫性のないレートでフレームを出力しても、それは問題ではありません。各フレームには、実際に到着した日時に応じてタイムスタンプが付けられ、すべてのデータとの同期が保たれます。

さらにこの「マスタークロック」は、自走式にすることも、GPS衛星からのPPS(パルスパーセカンド)や時刻・日付、IRIG時刻などの正確な外部時刻ソースにスレーブすることも可能です。

現在のDewesoftXはさらに強力です。自動車,航空宇宙,産業界など、数え上げればきりがないほど多くのインタフェースをサポートしています。また、次のような非常に特殊なテストプロトコル用に幅広いアプリケーションが組み込まれています。

自動車および航空宇宙 NVH/振動/音響 構造ダイナミクス/状態監視 電力とエネルギー
ADASテスト 騒音計 モーダルテスト 検出力解析
ブレーキテスト オクターブバンド解析 サインリダクションテスト(COLA) 電力品質解析
ブレーキノイズテスト ブレーキノイズテスト 衝撃応答スペクトル E-モビリティテスト
燃焼解析 サウンドインテンシティ 疲労解析  
E-モビリティテスト サウンドパワー 橋梁監視  
過酷な環境テスト FFT解析 FFT解析  
パスバイノイズ パスバイノイズ 状態監視  
道路荷重/耐久性 リバーブタイムRT60    
ビークルダイナミクス サウンドクオリティ    
PCMテレメトリ オーダートラッキング    
ロケット打ち上げ ロータ―バランス    
ロケットエンジンテスト 回転およびねじり振動    
  人体振動    

外部時刻同期については、SIRIUS-XHSシステムでは最新のPTP同期が可能で非常に高精度です。

DewesoftX 2020は、組み込みまたは外部のホストコンピュータへのデータの高速ストリーミングをサポートします。最新のハードウェアはSIRIUS-XHSで、USB3.0を介してホストにチャネルあたり15MS/sで8チャネルを継続的にストリーミングできます。

産業,自動車,航空宇宙など幅広いアプリケーションのEtherCATマスタに、リアルタイムに低速でストリーミングすることもできます。これにより高速DAQと完全に決定論的な制御システムの2つの世界が生み出されます。担当者は両方のシステムの長所を1つにまとめることで、コストを削減しデータの精度を高めることができます。

またDewesoftは初期に演算を導入し、その数とパワーは時間の経過とともに増加しています。さまざまな組み込みの演算と自由に構成可能な演算チャネルがあり、担当者はプログラミングなしで何千もの機能を作成できます。

さらに、演算はリアルタイム(収録中)とオフラインの両方で実行できます。担当者はデータをキャプチャして再読み込みし、フィルタリングなど関心のある演算を適用できます。リアルタイムで実行されていた演算は、収録後に編集して再処理できます。

APIインタフェースによりカスタムプラグインを開発し、ソフトウェアに完全に統合することも可能です。

DewesoftXは、DelphiやC++などのプログラミング言語を使用して構築されています。ただし担当者は豊富な機能を使用するためにプログラミングを行う必要はありません。多くの演算を自動化できるシーケンサーが組み込まれており、ユーザー定義可能な関数もあります。これにより、忙しい担当者は重要な作業に集中できるようになります。

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膨大なデータセットも即座にレビュー

DewesoftXは、500MB/秒以上でデータを書き込むことができる高性能の収録エンジンです。長時間高速にサンプリングすると、大きなデータファイルが作成されます。コンピュータのRAMが限られているため、レビューと解析のためにそれらをロードすることは、従来の方法では不可能です。DEWESoftは、数ギガバイトのデータファイルでも数秒で開くことができる特許取得済みのファイルストレージおよび検索システムを開発しました。

DewesoftXは、同期・非同期のアナログとデジタルデータ,ベクトルデータ,マトリクスチャネルデータを1つのデータファイルで記録できることが重要なポイントです。

この革新的なファイル構造によりDewesoftシステムは、チャネル設定,ディスプレイ設定,すべてのイベント,高速アナログデータ,およびさまざまなソースからの低速非同期データを一つのファイルに書き込み、このファイルを数秒でリロードすることができます。

例として、DewesoftXで1GBのデータファイルを記録してみましょう。

保存画面では、特定のファイルサイズで保存を停止するように指定することができます

ファイルが保存された直後に、担当者は解析モードに切り替えてファイルを開くことができます。
この特定のファイルは、1/10秒未満で開かれました。

DewesoftXのデータファイルを開くと、その全長が表示されます。

ファイルはサイズに関係なく、瞬時に開くことができます。これはすべての単純なデータポイントがRAMにロードされるわけではないからです。ファイル全体が表示され、時間軸カーソルを使用して任意の部分を拡大できます。カーソルは、上部に「I」と「II」のマークが付いた白い縦線です。

カーソル間をクリックすると、画面の幅がカーソルで選択された領域にズームインします。

この場合、波形は非常に密度が高くまだ多くのデータを調べているため、波形自体はまだわかりません。カーソルをファイル内の好きな場所に移動させ、その間をクリックすることで、再びズームすることができます。右クリックを使用して、1ステップずつズームアウトします。

波形を確認するために十分にズームインしてみましょう。

ズームイン後にDewesoftXで、鮮明な信号波形を確認できる

ソフトウェアは即座にデータファイルに入り、関心のある領域を引き出します。必要な解像度が見つかるまで、ズームインまたはズームアウトを続けることができます。収録するデータポイントが少なくなるため、ズームインすればするほど速くなります。

この時点で、カーソルを使用して計測を行うことができます。印刷したり、この領域を別のファイル形式にエクスポートしたりできます。または必要に応じてズームアウトして、データファイル全体をエクスポートすることもできます。

タスクバーの[再生]ボタンをクリックして、データが保存されているときと同じように画面全体でデータが再生されるのを確認することもできます。再生速度を上げたり下げたりすることもできます。逆再生もサポートされています。

また、タスクバーの[再生]ボタンをクリックすると、保存時と同じように画面上でデータが再生されるのを見ることができます。再生速度を上げたり下げたりすることも可能です。逆再生にも対応しています。

どんなに拡大・縮小しても、ファイル全体は常に波形の上に表示されます。これは、好きなチャネルに設定することができます。この帯の中の強調されたバーは、ズームウィンドウの幅とファイル内の位置を示しています。以下の例では、ファイル全体のごく一部を見ていることがわかります。

ファイル全体から選択可能な参照チャネルは、一番上の帯に表示されます

上図の帯の参照チャネルには、開始時刻と停止日時が両端にマークされています。

左側はデータファイルの開始点です。右側が終点です。

上図の参照チャネル帯の左端と右端を参照すると、データストレージは午前11:10:33に開始され、10秒後の午前11:10:43に終了したことがわかります。

ズームされたデータの開始時刻と終了時刻は、ズームカーソルの下端に表示されます。カーソルの交点の時刻は、常に各カーソルの下部に表示されます。

カーソルには、その位置の時刻が表示されています。

DewesoftXのファイル保存および収録ソフトウェアを使用すると、担当者は記録や解析により多くの時間を費やし、大きなデータファイルのロードやリロードを待つ時間を短縮することができます。ファイルサイズがますます大きくなり、その中にさらに多くのデータタイプ(CANバスデータ,EtherCATデータ,テレメトリデータ,ビデオデータなど)が含まれるようになるにつれて、これはますます重要になっています。

過酷な環境下のテストに最適なKRYPTON

ほとんどのDAQシステムは、実験室またはライトフィールドでの使用を想定して設計されています。DEWESoftは、特に過酷な環境下での計測を想定してKRYPTONシリーズを設計しました。

KRYPTONシリーズは、最大50mのEtherCATケーブルを使用して相互接続が可能

たとえば自動車やトラックのメーカーは、スウェーデンやカナダなどの非常に寒い場所や、-40℃に達する可能性のある冷蔵室で、車両の寒冷地試験を実施しています。また、周囲温度が48℃に達する可能性のあるアリゾナのような場所で暑い天候のテストも実施しています。

【動画】堅牢で分散設置可能なKRYPTONシリーズ

DAQシステムは、通常の電子機器であれば数分で壊れてしまうようなレベルの衝撃や振動にさらされることもあります。たとえば、あらゆる種類の衝撃試験,車両衝突試験,ロケットの打ち上げ,弾道試験,爆発物試験などです。

また、通常の機器は液体やほこりなどの微粒子にさらされないように、密閉されているわけではありません。水しぶきを浴びたり水中に沈んだりすると、ショートして感電の危険があります。

そして水だけでなく、霧,砂,湿度,塩気,油などの液体も、通常の電子機器では対応できない動作環境となります。

KRYPTONがこれらの極端な条件をどのように処理するかを見てみましょう。

広い動作温度範囲

KRYPTONシリーズは、高温と低温両方の極端な温度テストで使用されます。:-40~85℃

KRYPTONシリーズは、最も低温のテスト環境から最も高温のテスト環境まで使用可能です。

1台で-40℃~85℃まで使用できる計測器を持つことは、試験担当者にとって重要なメリットとなり、テストシステムのサイズ,複雑さ,コストを削減することができます。

IP67防水および防塵等級

IP規格(Ingress Protecting)では2桁の数字を使用して、防塵性能(1桁目)と防水性能(2桁目)の等級を示します。IP規格の構成方法は次のとおりです。

IP6*は、KRYPTONが粉塵が内部に侵入しないことを意味します。
IP*7は、KRYPTONを一次的に水に浸しても内部に浸水しないことを意味します。水没の他に水しぶきやスプレーも含まれます。

IP67防塵・防水KRYPTONシリーズ

耐衝撃と耐振動

KRYPTONは、動作中(および保管中)でも、強い衝撃や振動に耐えるように設計されています。
それらは次のようにテストされています:

  • 衝撃:SIST EN 60068-2-27:2009(100g, 6ms)
  • ランダム振動:(13g RMS)

KRYPTONの振動および衝撃試験

過酷な環境用 EtherCAT®ケーブル

ハードウェアが防水性、防塵性を備え-40℃の温度に耐えられても、ケーブルがこれらの環境に耐えられなければ、ケーブルが原因でシステムに障害が発生します。

そこで、DEWESoftは、過酷な環境下で使用されるKRYPTONシリーズを相互接続するためにEtherCATケーブルを開発しました。以下のビデオでは、ケーブルを-40℃に凍結しても柔軟性を維持しているかを見ることができます。

KRYPTONシリーズは、過酷な衝撃,振動,温度,環境条件に耐え、動作し続けるためにゼロから設計されました。液体,煙,ほこりに対する保護等級IP67を持ち、-40~85℃の極端な温度範囲で動作し、最大100Gまでの衝撃保護を提供します。

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データ収録&制御システム IOLITE(アイオーライト)

これまで、リアルタイム制御システムDAQシステムとがありました。

  • リアルタイム制御システム:イベントにできるだけ速く反応し、非常に決定論的なデータを使用するように設計されています。データの記録は二次的な関心事でした。
  • DAQシステム:可能な限り高速にデータを収録するように設計されています。制御システムにリアルタイムでデータを提供することは、ほとんど、あるいは完全に不可能でした。

データ収録&制御システムIOLITEは、制御システムとDAQシステムの架け橋となる画期的な一歩を踏み出しました。IOLITEには並行して動作する、2つのEtherCATバスが装備されています。 プライマリバスは、PCコンピュータのハードドライブへのフルスピードのバッファデータ収録に使用され、セカンダリバスは、サードパーティのEtherCATベースの制御システムへのリアルタイムの低遅延データフィードに使用されます。

データ収録&制御システムIOLITE ラックマウントシステムとベンチトップ

IOLITEは高速DAQの世界を橋渡しし、低遅延データをPLCにストリーミングします。それだけではありません。ほとんどのDAQシステムはさまざまなアナログ入力タイプの処理に100%重点を置いていますが、IOLITEは多チャネルのデジタル出力を追加し、アクチュエータを直接駆動することができます。

このデジタル出力により、EtherCATマスタをPC上のソフトウェアで実装できるため、IOLITEはPLCハードウェアを不要にすることができます。このマスタは、IOLITEの出力を制御することができます。

【動画】IOLITE DAQと制御システムの概要

驚くべきことにPLCとDAQの間には、EtherCAT回線が1つしかありません。これによりケーブル接続が大幅に削減され、同じ信号の冗長なアナログからデジタルへの変換が不要になります。そして、制御とデータ収録という異なる世界を、ひとつのシステムで実現しました。

フェーズ3統合とは、DAQシステムがリアルタイム制御システムと決定論的に統合されていることを意味します。実際DAQシステムは単なる非同期式の周辺機器ではなく、ネットワークの一部になる必要があります。EtherCATを使用する機器は、制御計測の2つのグループに分けられます。PLCなどの制御デバイスはEtherCATネットワークのマスタですが、DAQシステムなどの計測デバイスはスレーブです。

DAQシステムにEtherCATスレーブポートを搭載することで、DEWESoft社はフェーズ1やフェーズ2の統合の制限をなくし、DAQシステムをリアルタイム制御システムに直接取り込むことができました。

EtherCATプロトコルでPLCにリアルタイムデータを送信するDEWESoft DAQシステム

IOLITEは、DAQシステムがEtherCATネットワーク上の真のスレーブノードであり、ホストからの指示でタイムスタンプ付きの(決定論的)データを送信するため、フェーズ3実装となります。冗長なA/D変換や非決定論的なイーサネットデータはもう必要ありません。

DAQとリアルタイム制御の世界は、一台の装置で結びつきました。

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